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男子高校生東海道×女装保健医京浜東北
だけどかけ算って言うかこれは足し算って言うか割り算って言うか
ぶん投げるだけぶん投げていきます
二度目に保健室を訪ねたのは今度こそ意識してだった。保健室で兄弟で騒いだからか、傷口が目立つところだったからか、あるいは単に京浜が覚えていただけなのかどれかはわからないが、ノックをして返事を聞かずに保健室の扉を開けると、保険医は少し驚いて目を丸くした。
「あれ、またどうかしたの?」
「こないだの傷、病院に行きそびれてて」
「それはいけないね」
京浜は目の前のいすを指し示して座るように促した。東海道も素直に従う。今度は何かの迷いもなく、濡らすのを避けていた額の傷口の絆創膏を京浜のしなやかな指が剥がす。爪が透明な膜をかぶっているということに気づいた。彼はどんな顔をしてその爪に刷毛を這わせるのだろうか、と思う。
ぴたりとした黒いタイトスカートから、ストッキングにくるまれた足がすらりと伸びている。どうしても京浜は白衣を着ているさましか想像ができない。少しうつむいて、その手が逆の手の爪に刷毛を乗せるとき、目は大きく開かれているのだろうか、ふせがちなのだろうか。唇はきつく結ばれているのだろうか、薄く開いているのだろうか。白衣の下の、男とはわかるけれども細いその肩は、少し緊張して上がっているのだろうか、しなやかにリラックスして降りているのだろうか。興味は尽きず、しかし踏み込みようもわからなかった。そもそもなぜ今日、ここを訪れようと決めたのかもよくわからないのだ。
「だいぶ良くなってる」
ガラスの有無を検分したのと同じように、傷口の周りを押して確かめる指はしなやかにそそられた。京浜の言ったことは、自分の傷なのだから東海道だってわかっていた。たぶんほんとうはわざわざ、保健室までくる必要のないところまで治っているはずなのだ。それを訪れたいと思った段階で、東海道はなにか知らなかった何かの感覚を覚えていた。
「そうですか」
そういったものを押し殺して東海道は、京浜のいったことにさも今気づいたように答えた。静かに答える男子高校生には京浜も何の疑問も持たなかったようだった。
「一応、来てくれたからには絆創膏だけ貼り直すけど、今日の夜お風呂はいるときくらいにはもう剥がして良いよ。しみるだろうけどがんばってね」
言いながら京浜は傷口を改めて消毒する。その手首を捕まえたいと東海道は望んだ。けれどもそれをどうやってして良いのかわからないので、結局、はい、と答えるにとどめた。
綿球が押し当てられて、それからガーゼと絆創膏をあてがわれた。たまらない手つきだと思った。高崎が、触れられるはずもなく。だからあこがれる心境は分からなくもない。けれども東海道は一度だけ触れてしまった。そしてその時に押し当てられた唇の感触を忘れられない、そうすれば、その見た目だけでは辛抱できないと、東海道は何となくそう思った。
「難しい顔。皺が寄ってるよ」
絆創膏を貼り終わった手が眉間にふれた。兄や友人たちにしばしば指摘される癖だ。指先が、つつ、とおそらく皺の線をなぞったのだろう。反射的に、その目の前にある細く骨の浮き上がった手首を、掴んでいた。
「今日は、おまじないはないんですね」
絞り出した言葉は、きっと彼にかかれば子供の戯れだ。うれしそうに彼が唇の端をあげるのをみた。さしずめ、バカな子供が落ちてきた、といったところか。
バカな子供でも大いに結構だ、それが彼を油断させるのだというならば。東海道はゆっくりと口を開く。
「残念です、先生に逃げられるなんて」
「逃げる?」
「そんなきれいな顔で逃げられたら、オレには追いかけられません」
正直にありのままを言ってやった。けれども薄く笑うのも忘れなかった。京浜は少し目を丸くしてから声を立てて笑った。
「なぁに、僕に興味を持ったの? 君が? まだ先行きもあって、あんなすてきなお兄さんを持っている君が?」
「いけませんか?」
「僕はからかっただけなのに?」
「承知の上です」
「ふうん」
笑う保健医の表情はそこはかとなく明るくて、ああ、こんな顔が見たかったのだろう、と東海道は自覚した。逃げ場のなくなるような、そんな引力を感じ取ってしまったのだ。
「バカだね」
手首を振り払いながら京浜はもう一度東海道の眉間をくい、と押した。その仕草すらもたまらなく思えたから、たぶん自分はもう逃げられないのだろう。
「ええ」
用事が済んだら居座る理由もなかった。立ち上がると、本当に少しだけ東海道の方が背が高いようで、予測していなかった動きに驚いたらしい京浜が目を見開いた。その表情は至って自然だった。
「失礼しました、またきます」
「用もないのに、保健室に?」
「ええ」
答えて一礼すると、京浜は笑って見せた。それから、詰め襟をぐっと捕まれて、引き寄せられて。京浜の細い足首が、背を伸ばして少し延びるのを東海道は見た。額にはキスをされた。
「お大事に、どうぞ?」
彼はとても楽しそうだった。東海道は何も言わずにその部屋を出た。瞼の裏に焼き付いた保健医の笑顔は、不自然なくらいにきれいなものだった。
*
続くのかな
「あれ、またどうかしたの?」
「こないだの傷、病院に行きそびれてて」
「それはいけないね」
京浜は目の前のいすを指し示して座るように促した。東海道も素直に従う。今度は何かの迷いもなく、濡らすのを避けていた額の傷口の絆創膏を京浜のしなやかな指が剥がす。爪が透明な膜をかぶっているということに気づいた。彼はどんな顔をしてその爪に刷毛を這わせるのだろうか、と思う。
ぴたりとした黒いタイトスカートから、ストッキングにくるまれた足がすらりと伸びている。どうしても京浜は白衣を着ているさましか想像ができない。少しうつむいて、その手が逆の手の爪に刷毛を乗せるとき、目は大きく開かれているのだろうか、ふせがちなのだろうか。唇はきつく結ばれているのだろうか、薄く開いているのだろうか。白衣の下の、男とはわかるけれども細いその肩は、少し緊張して上がっているのだろうか、しなやかにリラックスして降りているのだろうか。興味は尽きず、しかし踏み込みようもわからなかった。そもそもなぜ今日、ここを訪れようと決めたのかもよくわからないのだ。
「だいぶ良くなってる」
ガラスの有無を検分したのと同じように、傷口の周りを押して確かめる指はしなやかにそそられた。京浜の言ったことは、自分の傷なのだから東海道だってわかっていた。たぶんほんとうはわざわざ、保健室までくる必要のないところまで治っているはずなのだ。それを訪れたいと思った段階で、東海道はなにか知らなかった何かの感覚を覚えていた。
「そうですか」
そういったものを押し殺して東海道は、京浜のいったことにさも今気づいたように答えた。静かに答える男子高校生には京浜も何の疑問も持たなかったようだった。
「一応、来てくれたからには絆創膏だけ貼り直すけど、今日の夜お風呂はいるときくらいにはもう剥がして良いよ。しみるだろうけどがんばってね」
言いながら京浜は傷口を改めて消毒する。その手首を捕まえたいと東海道は望んだ。けれどもそれをどうやってして良いのかわからないので、結局、はい、と答えるにとどめた。
綿球が押し当てられて、それからガーゼと絆創膏をあてがわれた。たまらない手つきだと思った。高崎が、触れられるはずもなく。だからあこがれる心境は分からなくもない。けれども東海道は一度だけ触れてしまった。そしてその時に押し当てられた唇の感触を忘れられない、そうすれば、その見た目だけでは辛抱できないと、東海道は何となくそう思った。
「難しい顔。皺が寄ってるよ」
絆創膏を貼り終わった手が眉間にふれた。兄や友人たちにしばしば指摘される癖だ。指先が、つつ、とおそらく皺の線をなぞったのだろう。反射的に、その目の前にある細く骨の浮き上がった手首を、掴んでいた。
「今日は、おまじないはないんですね」
絞り出した言葉は、きっと彼にかかれば子供の戯れだ。うれしそうに彼が唇の端をあげるのをみた。さしずめ、バカな子供が落ちてきた、といったところか。
バカな子供でも大いに結構だ、それが彼を油断させるのだというならば。東海道はゆっくりと口を開く。
「残念です、先生に逃げられるなんて」
「逃げる?」
「そんなきれいな顔で逃げられたら、オレには追いかけられません」
正直にありのままを言ってやった。けれども薄く笑うのも忘れなかった。京浜は少し目を丸くしてから声を立てて笑った。
「なぁに、僕に興味を持ったの? 君が? まだ先行きもあって、あんなすてきなお兄さんを持っている君が?」
「いけませんか?」
「僕はからかっただけなのに?」
「承知の上です」
「ふうん」
笑う保健医の表情はそこはかとなく明るくて、ああ、こんな顔が見たかったのだろう、と東海道は自覚した。逃げ場のなくなるような、そんな引力を感じ取ってしまったのだ。
「バカだね」
手首を振り払いながら京浜はもう一度東海道の眉間をくい、と押した。その仕草すらもたまらなく思えたから、たぶん自分はもう逃げられないのだろう。
「ええ」
用事が済んだら居座る理由もなかった。立ち上がると、本当に少しだけ東海道の方が背が高いようで、予測していなかった動きに驚いたらしい京浜が目を見開いた。その表情は至って自然だった。
「失礼しました、またきます」
「用もないのに、保健室に?」
「ええ」
答えて一礼すると、京浜は笑って見せた。それから、詰め襟をぐっと捕まれて、引き寄せられて。京浜の細い足首が、背を伸ばして少し延びるのを東海道は見た。額にはキスをされた。
「お大事に、どうぞ?」
彼はとても楽しそうだった。東海道は何も言わずにその部屋を出た。瞼の裏に焼き付いた保健医の笑顔は、不自然なくらいにきれいなものだった。
*
続くのかな
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