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2024/11
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こんにちは、アリスから梅子に改名を考えている山崎です。
とりあえず何か降ってきたのでぶん投げていきます。
頭が冷静になったら書き直そうと思います。

大正時代
東海道本線×京浜東北
ジュニアの髪が長かったらやばいよねぇという脳内会議の産物


 



「東海道さん」
 東北本線との乗り入れが近づいてきていたころ、帝都を一度なぎ払うような大災害が起こったのは、まったくもって不運なことであり、そして京浜にとってはすこしだけ、ほんとうにすこしだけ喜ばしいことだった。なぜならばその出来事によって乗り入れが少しだけ先延ばしされて、東海道といられる時間が少しだけ延びた。東海道の破損した路線を修復するのに、それどころではなくなってしまったのだ。
 職員と混じって東京駅の修復作業をしている東海道に、京浜は後ろから声を掛けた。ああ、と返事をしながら東海道は額の汗を拭った。暑い夏だった。東海道は着物の袖をまくり上げ、ひもでそのたもとを縛っていた。作業をする姿に違和感を覚えたのは、つまり、東海道の背中に見慣れない違和感があったからだ。
「髪が伸びましたね、はい、お水」
 京浜は土木作業に関わらせては貰えなかった。まだ路線として未発達な京浜の細いからだでは、そういった作業をしたときに気が遠くなってしまわれても困るというのがその理由だった。だから東海道が表に出て働いている分、京浜は書類やそういった内側で出来る仕事をずっと手伝っていた。
「ああ、そういえばそうだな」
 前髪に関しては耳に書けているからそれほど気にならないようだが、後ろ髪は伸び放題で、東海道はそれを無造作に払っていた。作業をしていた職員達に声を掛けて、京浜の方へ向かってきた東海道からは、夏と土と汗の混じり合った生々しい匂いがした。
 京浜は思わず目を背けそうになった。
 東海道はその京浜に無造作に、渡された瓶を受け取ると、真夏の太陽の光を浴びながらそれを呷った。ばさばさと広がっては汗の湿気で不愉快そうにまとまる髪を見て、京浜は傍らに握りしめていた書類を綴じていたひもをほどいた。
 目も当てられないのはこちらのほうなのだ。
「東海道さん、背中向けて下さい」
「どうした」
「髪を結んであげます」
 東海道はその辺にあった建材の上に座った。着物も袴も、汚れてもお構いなしだった。京浜はそういった仕事に就かないから、なるべく砂埃を払うようにはしていたけれども、そんなどろどろの東海道の髪に触っていたら全て台無しだった。
「ひも、いいのか」
「そんなもの部屋に戻れば幾らでもありますから、東海道さんの髪の毛が問題です」
 彼が座った後ろに立ったので、さすがの京浜でも東海道の頭に悠々手を掛けられた。あまり難しい結び方なんて分からないので、手から逃げない程度の長さの髪を、耳の下辺りでまとめた。東海道は何も言わなかった。京浜の首筋を真夏の太陽がじりじりと焼く。
「できました」
 何の造作もなく、本当に髪を纏めただけだった。それでも東海道は振り向いて、ああ、すっきりした、と笑った。すっと纏めただけの髪が、東海道の輪郭をあらわにして強調した。あの涼しげな骨格を京浜はたまらなく愛していた。つまり、振り向いた東海道の凜とした表情に、京浜は思わず息を呑みかけて、そしてぐっとこらえた。
「これは楽だな、京浜、ありがとう」
「どういたしまして、容易いご用です」
 その首筋にかみつくように甘えたいと思うけれども、たぶん夏のせいだ。夏が全ての東海道の輪郭をあらわにしようとしているだけで、それは京浜にとってただの一過性の衝動だと、ただそうやってやりすごすだけだ。
「すごく、綺麗です」
 ただそれだけを言う。何がだ、と聞かれて、少しだけ詰まった。まさかその姿や骨格や内面すべてを欲しているからとは言えなくて、結局京浜は目の前で揺れる尻尾を言った。
「黒い髪が」
「お前の赤茶けた髪も好きだよ、俺は」
 反射的な社交辞令に本気になってはいけない、信じてはいけない。京浜はただ笑って、ありがとうございます、だけ言った。
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